大阪地方裁判所 昭和59年(ワ)7459号 判決 1988年12月27日
原告 株式会社浪花大源
被告 株式会社大商
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、蒲鉾等を販売するに際し、別紙イ号物件説明書記載の包装箱及び同ロ号物件説明書記載の包装用袋を使用し、又は、右包装箱、包装用袋を使用した蒲鉾等を販売してはならない。
2 被告は、前項記載の各包装箱及び包装用袋を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、金二二七六万八七五〇円及びこれに対する昭和五九年一〇月一九日から右完済まで年五分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 第3項につき仮執行の宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二当事者の主張
一 請求原因
1 意匠権の侵害
(一) 原告は、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件意匠」という。)を有している。
意匠に係る物品 包装用袋
出願日 昭和五六年六月五日(意願昭五六―二四七〇〇)
登録日 昭和五八年七月二〇日
登録番号 第六〇九五六七号
登録意匠 別紙意匠公報(一)(以下「本件公報」という。)記載のとおり
しかるところ、本件意匠には次の類似意匠が付帯している。
(1) 類似意匠1
意匠に係る物品 包装用袋
出願日 昭和五七年四月九日(意願昭五七―一五四五九)
登録日 昭和五九年七月二四日
登録番号 第六〇九五六七号の類似一
登録意匠 別紙意匠公報(二)記載のとおり
(2) 類似意匠2
意匠に係る物品 包装用袋
出願日 昭和五九年九月四日(意願昭五九―三六九三二)
登録日 昭和六一年四月八日
登録番号 第六〇九五六七号の類似二
登録意匠 別紙意匠公報(三)記載のとおり
(二) 被告は、昭和五七年一〇月ころから、業としてその販売に係るかに風味蒲鉾の包装袋として別紙ロ号物件説明書記載の包装用袋(以下「ロ号袋」という。)を使用している。
(三) 右ロ号袋の意匠は、以下に述べるとおり、本件意匠の類似範囲に属するものである。
(1) ロ号袋は、本件意匠に係る物品と同じ「包装用袋」である。
(2) 本件意匠の構成
(イ) 縦横比がほぼ一二対一一の相互に合着する二枚のほぼ正方形のシート状の表面及び裏面にそれぞれ透明部を有する図形部と透明な外枠部が配されている(本件公報の正面図、背面図、透明部を細斜線で示す展開図並びにA―A線及びB―B線各端面図参照)。
(ロ) 表面の図形は、図形部の下辺全体に連続して扇形の波図形を鱗状に三段、二一個連ねた鱗状波形図形を配し、かつ、図形部のほぼ中央に大きく北海道の概略線図を配し、さらに、図形部の上辺全体に連続して円弧を連結した円弧状波形図形を配したものである(同正面図参照)。
(ハ) 裏面の図形は、図形部の下辺全体に連続して扇形の波図形を鱗状に三段、二一個連ねた鱗状波形図形を配し、かつ、図形部の上辺全体に連続して円弧を連結した円弧状波形図形を配するとともに、上辺と下辺の中間部であつて左側の下辺直上方に模式人物図(以下「人形図」という。)を配したものである(同背面図参照)。
(ニ) 表面及び裏面とも、図形部の上辺全体の円弧状波形図形は、その連続する円弧の各円弧が下方に膨張し、図形部の下辺全体の鱗状波形図形における扇形の波図形の各円弧は上方に膨出している(同正面図及び背面図参照)。
(ホ) 表面及び裏面とも、図形部の下辺全体の鱗状波形図形における扇形の波図形は、三条の円弧を同心円状に配したものであり、最上段の波図形における最外周の円弧の最外端は、図形部の全縦長さに対して、図形部下端から約一七パーセントの位置に配されている(同正面図及び背面図参照)。
(ヘ) 表面及び裏面とも、図形部の上辺全体の円弧状波形図形は、八個の円弧を連結し、かつ、この連結された波形を七段配し、最外部の波形における最外端を、図形部の全縦長さに対して、図形部上端から約三〇パーセントの位置に配したものである(同正面図及び背面図参照)。
(3) 類似意匠1の構成
類似意匠1の構成を本件意匠の構成と対比してみると、(イ)図形部分の縦横の比率において、本件意匠のそれが縦長であるのに対し、類似意匠1のそれは横長である、(ロ)上辺図形と下辺図形の各上下方向の幅において、本件意匠のそれは上辺図形の幅の方が大であるのに対し、類似意匠1のそれは両者ともほぼ同一である、(ハ)北海道の概略線図の縦横の比率において、本件意匠のそれがほぼ同一であるのに対し、類似意匠1のそれは横長である(類似意匠1の北海道の概略線図は、本件意匠のそれを図形部の上下方向に対し約五分の三、幅方向に対し約三分の二の割合で縮めて変形したものである。)等の点で相違するが、その他の基本的構成すなわち、(a)方形状の表面及び裏面に、それぞれ透明部を有する図形部と透明な外枠部が配される包装用袋であつて、(b)表面において、図形部の上辺及び下辺全体に、それぞれ上下方向に幅のある波形図形が配されるとともに、その中央に大きく北海道の概略線図が配され、(c)裏面において、図形部の上辺及び下辺全体に、それぞれ上下方向に幅のある波形図形が配されることは、同一である。
(4) 類似意匠2の構成
類似意匠2の構成を本件意匠の構成と対比してみると、(イ)図形部分の縦横の比率において、本件意匠のそれが縦長であるのに対し、類似意匠2のそれは横長である、(ロ)上辺図形と下辺図形において、本件意匠のそれが、上辺図形は円弧を連結した円弧状波形図形、下辺図形は扇形の波図形を鱗状に連ねた鱗状波形図形で、図形の上下方向の幅も上辺図形の方が大であるのに対し、類似意匠2のそれは、上辺図形も下辺図形も、いずれも扇形の波図形を鱗状に連ねた鱗状波形図形で、図形の上下方向の幅も同一である、(ハ)北海道の概略線図の縦横の比率において、本件意匠のそれがほぼ同一であるのに対し、類似意匠2のそれは横長である(類似意匠2の北海道の概略線図は、縦方向に偏平に変形され、縦辺がシート縦辺の約三五パーセント、横辺がシート横辺の約五〇パーセントの長方形に接するような大きさに表されている。)(ニ)裏面において、本件意匠には人形図が配されているのに対し、類似意匠2には人形図がない等の点で相違するが、その他の上記基本的構成は同一である。
(5) 以上にみた本件意匠と類似意匠1、2の各構成とその間の相違点及び共通点に照らすと、上記基本的構成こそが、本件意匠の要部ないし特徴であつて、本件意匠と上記類似意匠1、2との間にみられるような相違点は何ら本件意匠との類似性を否定する根拠にならないことが明らかである。
そして、意匠権の効力を登録意匠に類似する意匠にまで及ぼすことにした理由が不正競争の防止にあることからすれば、意匠の類否は、一般需要者が対比される意匠を混同するか否かによつて、判断されるべきである。
(6) ロ号袋の意匠の構成
そこで、ロ号袋の意匠構成をみると、次のとおりである。
(イ) 縦横比がほぼ一〇対一三の相互に合着する二枚の長方形のシート状の表面及び裏面にそれぞれ透明部を有する図形部と透明な外枠部が配されている(別紙ロ号意匠説明書の第二図、第五ないし第七図参照)。
(ロ) 表面の図形は、図形部の下辺全体と上辺全体とにそれぞれ連続して扇形の波図形を鱗状に三段、二三個連ねた鱗状波形図形を配し、かつ、図形部のほぼ中央に大きく北海道の概略線図を配したものである(同第二図参照)。
(ハ) 裏面の図形は、図形部の下辺全体と上辺全体とにそれぞれ連続して扇形の波図形を鱗状に三段、二三個連ねた鱗状波形図形を配したものである(同第五図参照)。
(ニ) 表面及び裏面とも、図形部の上辺全体の鱗状波形図形における扇形の波図形の各円弧は下方に膨出し、図形部の下辺全体の鱗状波形図形における扇形の波図形の各円弧は上方に膨出している(同第二図及び第五図参照)。
(ホ) 表面及び裏面とも、図形部の上下辺全体の鱗状波形図形における扇形の波図形は、三条の円弧を同心円状に配してなり、最上段又は最下段の波図形における最外周の円弧の最外端が、図形部の全縦長さに対して、図形部上下端から各約二三パーセントの位置となるように配されている(同第二図及び第五図参照)。
(ヘ) 北海道の概略線図はやや縦方向に偏平に変形され、縦辺がシート縦辺の約三五パーセント、横辺がシート縦辺の約五〇パーセントの長方形に接するような大きさに表されている(同第二図参照)。
(7) 本件意匠とロ号袋の意匠の対比
そこで、右ロ号袋の意匠の構成と本件意匠の構成を対比してみると、(イ)図形部分の縦横の比率において、本件意匠のそれが縦長であるのに対し、ロ号袋の意匠のそれは横長である、(ロ)上辺図形と下辺図形において、本件意匠のそれが、上辺図形は円弧を連結した円弧状波形図形、下辺図形は扇形の波図形を鱗状に連ねた鱗状波形図形で、図形の上下方向の幅も上辺図形の方が大であるのに対し、ロ号袋の意匠のそれは、上辺図形も下辺図形も、いずれも扇形の波図形を鱗状に連ねた鱗状波形図形で、図形の上下方向の幅も同一である、(ハ)北海道の概略線図の縦横の比率において、本件意匠のそれがほぼ同一であるのに対し、ロ号袋の意匠のそれは横長である(ロ号袋の意匠の北海道の概略線図は、縦方向に偏平に変形され、縦辺がシート縦辺の約三五パーセント、横辺がシート横辺の約五〇パーセントの長方形に接するような大きさに表されている。)、(ニ)裏面において、本件意匠には人形図が配されているのに対し、ロ号袋の意匠には人形図がない等の点で相違するが、その他の上記基本的構成は同一であることが明らかである。そして、これらの相違点、共通点は、類似意匠2と本件意匠との間のそれと全く同じである(ちなみに、ロ号袋の意匠は、別紙ロ号物件説明書添付の写真及び同ロ号意匠説明書添付の図面と別紙意匠公報(三)の類似意匠2の図面を対比すれば明らかなとおり、類似意匠2と全く同一といつてよい意匠である。)。
そして、右のごとき共通点を前提とし、意匠の類否を一般需要者が誤認混同するか否かによつて判断すべきであるとする前記立場からみれば、ロ号袋の意匠が本件意匠に類似することは明らかである。すなわち、本件意匠とロ号袋の意匠を対比してみると、両意匠は、上記基本的構成を共通にするために、看者に対して共通の印象を与えるとともに、そのモチーフの配置からしても、北海道の概略線図の上下に配した各波形図形のうち、上辺図形が空又は雲を、下辺図形が波を観念的に表現したことを一般需要者に容易に想起させるものになつている。
このように、両意匠は、外観上のみならず観念上も相紛らわしく、一般需要者が両意匠を離隔対比した場合には、これを混同することは明らかである。そして、本件意匠とロ号袋の意匠の間にみられる前記相違点が本件意匠とロ号袋の意匠の類似性を否定する根拠にならないことは、ロ号袋の意匠と全く同一といつてよい類似意匠2が本件意匠の類似意匠として登録されていることによつて明らかである。
したがつて、ロ号袋の意匠は、本件意匠に類似する。
2 不正競争行為
(一) 原告の商品表示(容器包装)及びその周知性
(1) 原告は、肩書地に本店を有し、水産魚肉練製品等の製造、販売を業とする会社であつて、別紙A号物件説明書記載の段ボール箱(以下「A号箱」という。)及び別紙B号物件説明書記載の包装用袋(以下「B号袋」という。)を使用して、かに風味の蒲鉾「北海ロール」(以下「原告製品」ともいう。)を販売している。
(2) 原告は、昭和五五年八月ころから原告製品の製造を開始し、同年一〇月ころからその販売を開始した。右のごときかに風味の蒲鉾を製造、販売したのは、水産魚肉練製品等の製造販売業界において原告が二番目であるが、珍味市場でなく一般需要者を対象とした市場に販売したのは、原告が初めてであつた。原告は、当初、原告製品を真空パツクしないいわゆる「バラ売り」の形態で販売し、その後真空パツクを使用するようになつても初めは無地の袋を使用していたが、昭和五六年の梅雨ころないし初夏ころからは、B号袋に真空パツクした原告製品をA号箱に梱包して販売するようになつた。
(3) 原告製品の容器包装であるA号箱及びB号袋の形状やそこに表示されている模様、図柄等は、それぞれ別紙A号物件説明書及び別紙B号物件説明書添付の写真に示すとおりである。すなわち、
I A号箱
(イ) A号箱は、薄茶色のダンボールで造られた直方体の箱である。
(ロ) 正面及び背面には、それぞれ青の輪郭線で描かれ上下方向に偏平に変形された北海道の概略線図と赤太字で横書き大書した「北海ロール」なる文字を組み合わせた標章が描かれている(なお、右「北海ロール」なる文字の右端には赤地に白抜きの<R>マークが小さく付されている。)ほか、その上部には、左端から中央にかけて、赤地に白抜き文字で「かに風味」なる表示とこれに続く青字の「珍味かまぼこ」なる表示が横書きされている。
(ハ) 左右両側面には、それぞれ中央部に赤太字で大きく横書きした販売者の氏名(原告の社名)が表示されているほか、その上部には二段組の長方形枠内に品名と添加物が、また、右氏名表示の下部には販売者(原告)の営業場所(工場所在地)が、それぞれ青字で横書きされている。
(ニ) 上面には、その右側上部に「送り先」、下部に「御中」なる文字が青字で書かれ、左側に「要注意」、「10℃以下で保存してください」との注意事項が赤字で大書されている。
II B号袋
(イ) B号袋は、透明な素材からなるやや横長の長方形状の包装用袋であるが、その表面及び裏面には、それぞれ透明部を有する図形部と透明な外枠部がある。
(ロ) 表面図形部の上辺には、上辺全体に連続して円弧を連結した円弧状波形図形が表され、下辺には、下辺全体に連続して三条の円弧を同心円状に配して形成される扇形の波図形を鱗状に三段、二三個連ねた鱗状波形図形が表されている。
(ハ) 上辺の円弧状波形図形の各円弧はいずれも下方に膨張し、下辺の鱗状波形図形における扇形波図形の各円弧はいずれも上方に膨出している。
(ニ) 上辺の円弧状波形図形及び下辺の鱗状波形図形の波模様は、いずれも青地に白の輪郭線で描かれたものである。そして、上辺の円弧状波形図形のほぼ中央部には原告社名の略称(「大源」)、下辺の鱗状波形図形の左端部には二段に「製法特許出願中」、「天然色素使用」の表示、中央部には販売者の表示(原告の社名)、右端部には二段に「要冷蔵」、「業務用30本入」の表示が、それぞれ赤字で横書きされている。
(ホ) 表面図形部の上辺円弧状波形図形及び下辺鱗状波形図形の間の中間部には、その中央部分に白の輪郭線で描かれ上下方向に偏平に変形された北海道の概略線図と赤太字で横書き大書した「北海ロール」なる文字を組み合わせた標章が描かれているほか、その上部には、左端から中央にかけて、赤地に白抜き文字で「かに風味」なる表示とこれに続く青字の「珍味かまぼこ」なる表示が横書きされている。
(ヘ) 裏面図形部の上辺及び下辺には、それぞれ右表面のそれと同様の円弧状波形図形及び鱗状波形図形が表されており、下辺鱗状波形図形の右端部には赤字で「業務用30本入」の文字が横書きされている。
(ト) 裏面図形部の上辺円弧状波形図形及び下辺鱗状波形図形の間の中間部には、その中央部分の大部分を占める白地の長方形が配され、そこに横書きで商品名、賞味方法、保存方法等が記載されているほか、その左側には赤色の人形図が表されている。
(4) 原告製品は、前記のごとく一般需要者を対象とした市場での先発商品であつたこと等から昭和五六年暮ころないし昭和五七年一月ころには、日本各地で広く知られた著名商品となつた。そして、そのころには、原告製品の容器包装であるA号箱及びB号袋は、それぞれに記載されている「かに風味」の表示と、北海道の概略線図と赤字で大書した「北海ロール」の文字を組み合わせた特徴ある標章が、北海道とかに及びかにの肉を模した原告製品との結び付きを強くイメージさせ(B号袋においては、その上下辺に描かれた特徴的な前記円弧状波形図形及び鱗状波形図形が、さらにこれを強調している。)、かかる包装袋や包装箱に入つた蒲鉾は、原告が製造するかに風味の蒲鉾であるとの認識を広く生じさせるに至つた。すなわち、原告製品の容器包装であるA号箱及びB号袋は、それぞれ、そのころ、原告製品を同種の他のかに風味蒲鉾と区別して個別化し、その同一性を取引業者及び一般需要者に認識させる商品表示としての機能を持つと同時に、周知性を獲得した。
(二) 被告の商品表示(容器包装)及び誤認混同のおそれ
(1) しかるところ、被告は、昭和五七年一〇月ころから、別紙イ号物件説明書記載のダンボール箱(以下「イ号箱」という。)及び前記ロ号袋を使用して、かに風味蒲鉾「かにロール」(以下「被告製品」ともいう。)を販売している。
(2) 被告製品の容器包装であるイ号箱及びロ号袋の形状やそこに表示されている模様、図柄等は、それぞれ別紙イ号物件説明書及び別紙ロ号物件説明書添付の写真に示すとおりであり、原告製品の容器包装であるA号箱及びB号袋のそれに酷似している。
I A号箱とイ号箱の対比
<1> 箱の色、形状、寸法がほとんど同一である。
<2> デザインを構成する全ての文字及び図形の字体、形状、色、配置及び大きさは、標章を構成する文字の一部(A号箱の「北海」に対しイ号箱は「かに」)並びに販売者名及び販売者の営業場所(A号箱は原告、イ号箱は被告のそれぞれ社名及び営業場所を記載)が異なるほかは、ほとんど同一である。
<3> 右標章を構成する文字及び図形の、字数、色、配置及び大きさは、右の「北海」と「かに」の点を除きほとんど同一である。イ号箱の標章は、右のごとく文字と北海道の変形概略線図の組合せ方及び配置状態がA号箱のそれと全く同一であるから、看者に酷似した印象を与える。
II B号袋とロ号袋の対比
<1> 包装用袋の形状、寸法、色彩、配色及び基本的デザインがほとんど同一である。
<2> デザインを構成する全ての文字及び図形の字体、形状、色、配置及び大きさが標章を構成する文字の一部(B号袋の「北海」に対しロ号袋は「かに」)並びに販売者名及び販売者の営業場所(B号袋は原告、ロ号袋は被告のそれぞれ社名及び営業場所を記載)が異なるほかはほとんど同一である。
<3> 標章を構成する文字及び図形の、字数、色、配置及び大きさは、右の「北海」と「かに」の点を除きほとんど同一である。ロ号袋の標章は、右のごとく文字と北海道の変形概略線図の組合せ方及び配置状態がB号袋のそれと全く同一であるから、看者に酷似した印象を与える。
(3) したがつて、イ号箱及びロ号袋を使用した被告製品を取引業者や一般需要者が見た場合、これらが原告ないし原告と密接な関係のある者の商品であるかのように誤認混同するおそれがある。
(三) 営業上の利益を害されるおそれ
原告は、原告製品のために多額の開発費を投じ、品質保証のため万全の品質管理を行つており、原告製品で農林水産大臣賞を受賞するなど日本国内において名声を博している。
被告が右のごとく誤認混同のおそれのあるイ号箱及びロ号袋を使用して被告製品を販売すれば、これにより原告の営業上の利益が害されるおそれが生じることはいうまでもない。
3 損害
(一) 被告は、被告製品の販売を始める以前は、原告製品を原告から買い入れて販売してきたものであるから、イ号箱及びロ号袋を使用して被告製品を販売するにあたり、これを販売すれば原告の商品と誤認混同が生じることを認識していたことは明らかである。被告は、右販売が原告の意匠権を侵害すること及び不正競争防止法一条一項一号に違反することにつき故意があるというべきである。
(二)(1) 被告の利益相当額の損害
被告が昭和五六年一〇月から昭和五七年九月までの間に原告から原告製品を購入してこれを販売した総額は五八〇五万円である。被告は、昭和五七年一〇月からは、原告製品を原告から購入して販売することをやめ、第三者から購入した被告製品を販売するようになつたが、かに風味蒲鉾の市場伸長率は年約一・五倍であるから、被告による被告製品の販売額は次のとおりである。
昭和五七年一〇月から昭和五八年九月まで 八七〇七万五〇〇〇円
昭和五八年一〇月から昭和五九年九月まで 一億三〇六一万二五〇〇円
合計 二億一七六八万七五〇〇円
これに利益率(一〇パーセント)を乗じた二一七六万八七五〇円が被告の得た利益であり、これが原告の被つた損害の額と推定される。
(2) 実施料相当額の損害
右(1)の主張に理由がないとしても、右(1)の被告製品の販売総額に五パーセントを乗じた一〇八八万四三七五円を実施料相当額の損害の賠償として請求する。
(三) 本訴提起に伴い弁護士費用として一〇〇万円を下らぬ費用を要するが、これは被告の右不法行為による損害であるので、その賠償を請求する。
4 よつて、原告は、被告に対し、意匠権侵害行為及び不正競争行為の差止め、右各行為の組成物件の廃棄並びに前記損害金合計二二七六万八七五〇円及びこれに対する不法行為の後で本件訴状送達の日の翌日である昭和五九年一〇月一九日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否及び主張
1 請求原因1(一)、(二)の事実は認める。同(三)の主張は、争う。ただし、ロ号袋が「包装用袋」であることは認める。
2 同2(一)(1)の事実は認め、同(2)ないし(4)の事実及び主張は争う。同(二)(1)の事実は認め、同(2)、(3)の事実及び主張は争う。同(三)は否認する。
3 同3(一)の事実のうち、被告が被告製品を販売する前に原告製品を原告から買い入れて販売していたことは認め、その余は否認する。同(二)及び(三)は否認する。
4 意匠の非類似
(一) 本件意匠は、その登録出願前、日本国内において公然知られた意匠であつた。すなわち、被告は、昭和五三年ころから原告と取引があり、そのころから原告に対し商売上の支援をしていたところ、原告は原告製品を独自の力では販売できないため被告の販売ルートを利用して販売したいと被告に要請し、被告はこれに協力して真空パツクした原告製品を販売することになつた。そして、被告代表取締役高橋貫治と原告代表取締役北尾英夫は、右原告製品の販売にあたつて使用する包装用袋の意匠を相談して創作した。それが本件意匠である。そして、原告と被告は、原告が販売する製品の包装用袋としては、販売者、製造者として原告の社名を表示した袋(以下「原告用袋」という。)を用い、被告が販売する製品の包装用袋としては販売者として被告の社名を表示し、製造者が原告であることを表す記号として「大商A」なる表示を付した袋(以下「被告用袋」という。)を用いることを合意し、昭和五五年一〇月から、本件意匠を付した原告用袋及び被告用袋を用いて原告製品の販売を開始した。その結果、本件意匠は、右時点以降、日本国内で公然知られた意匠となつた。ところが、本件意匠が出願されたのは、これより後の昭和五六年六月五日である。したがつて、本件意匠は、その登録出願前、日本国内において公然知られたものであつた。
(二) しかるところ、本件意匠とロ号袋の意匠を対比すると、次の相違点がある。
(1) 本件意匠は上辺図形と下辺図形の構成が異なり、その高さ(上下方向の幅)も異なるのに対し、ロ号袋は上辺図形と下辺図形の構成も高さ(上下方向の幅)も同じである。
(2) 本件意匠の北海道の概略線図はバター等の包装用紙として使用されている北海道の地形により類似しているのに対し、ロ号袋の北海道の概略線図は横長に変形されている。
(3) 本件意匠の裏面には人形図があるが、ロ号袋にはこれがない。
(4) 図形部分の縦横の比率が異なる。
以上の相違点がある結果、本件意匠とロ号袋の意匠は、看者に別異の印象を与えるから、類似しない。
三 抗弁(権利濫用)
本件意匠は、前記のとおりその登録出願前、日本国内において公然知られたものであり、元来、登録を受けることができないものであつた(意匠法三条一項一号)。したがつて、本件意匠権は、本来、何ら効力を有しえないものであり、まして前記本件意匠創作の経過に照らせば、かかる無効な意匠権に基づく請求は権利の濫用として許されないというべきである。
四 被告の主張に対する原告の反論
1 原告用袋や被告用袋が使用されるようになつたのは、本件意匠の登録出願後のことであり、本件意匠は、出願前公然と知られたものではなかつた。
2 本件意匠とロ号袋の意匠を対比すると、両者において上辺の図形を異にすることは、被告主張のとおりである。しかし、本件意匠の上辺の円弧状波形図形の円弧及び下辺の鱗状波形図形における扇形の波図形の円弧は、前者はその膨張部が下方に膨張することにより看者の注意を下方に向かわせ、後者はその膨出部が上方に膨出することにより看者の注意を上方に向かわせ、合わせて、看者の注意を図形部の中央部に導くべく構成されているものである。すなわち、これにより、本件意匠の正面図においては、図形部の中央にある北海道の概略線図に、背面図においては、図形部の中央の透明部分に看者が注目することになる。
一方、ロ号袋の意匠も、上辺の鱗状波形図形における波図形の膨出部が下方に向かい、下辺のそれが上方に向かうことによつて、看者の注意を図形部の中央部に導くべく構成されているものであり、看者の注意を図形部の中央部に向かわせる機能を果たす図形である点で、本件意匠のそれと共通している。しかも、ロ号袋の上辺の鱗状波形図形は、本件意匠の下辺の鱗状波形図形に酷似するから、離隔観察、間接対比観察をした場合、その差異は認識できない。
3 また、ロ号袋の意匠の背面図に人形図が存在しないのも事実である。しかしながら、本件意匠の裏面の人形図は、左手を斜め上方へ伸ばし、背面図の図形中央を指しており、看者の注意が図形部中央へ向かうように構成されたものであつて、その意味で、上辺及び下辺の各波形図形が持つ前記の機能を補助しているにすぎないのである。これがなくとも、看者の注意は背面図の中央に集まるのである。しかも、ロ号袋の上辺及び下辺の波形図形は、本件意匠のそれと酷似しているので、両意匠を混同させる可能性は極めて高い。そもそも、意匠の類似判断は一般需要者の混同の可能性の有無をその判断基準とするところ、本件意匠に係る物品は包装用袋であり、一般に正面図を表にして取引され、裏面(背面図)は観察される機会が少ないから、背面図のしかも小さな人形図の有無が意匠の類否判断に占めるウエイトは小さい。
4 北海道の概略線図が横長か否かの点や図形部の縦横比率の相違点は微差にすぎない。
5 以上に述べたことは、類似意匠1及び2を見れば明らかである。殊に、類似意匠2はロ号袋の意匠と全く同一であり、ロ号袋の意匠が本件意匠の類似範囲にあることは明らかである。
五 抗弁に対する認否
争う。原告用袋や被告用袋が使用されるようになつたのは本件意匠の登録出願後である。
第三証拠<省略>
理由
一 意匠権に基づく請求について
1 請求原因1の(一)(原告の意匠権)及び同(二)(被告によるロ号袋の使用)については、当事者間に争いがない。
2 そこで、以下、同(三)(意匠の対比)について検討する。
(一) ロ号袋が本件意匠に係る物品と同じ「包装用袋」であることについては、争いがない。
(二) いずれも成立に争いのない甲第一号証(本件公報)、第三号証の七(類似意匠1の意匠公報)、第一三号証の八(類似意匠2の意匠公報)によれば、本件意匠及び類似意匠1、2の構成は、原告が請求原因1(三)の(2)ないし(4)において主張するように分説しうるものであると認めることができる。
(三) ロ号袋の写真であることに争いのないロ号物件説明書添付の写真とロ号袋であることに争いのない検甲第一四号証によれば、ロ号袋の意匠の構成は、「ただし、ロ号物件説明書記載の各文字のある部分において北海道の概略線図が連続せず、各波形図形が連続模様になつていない。」と付加するほかは、原告が請求原因1(三)の(6)において主張するように分説しうるものであると認めることができる。
(四) しかるところ、被告は、本件意匠はその出願前日本国内において公然知られた意匠であつた旨主張するので、本件意匠とロ号袋を対比するに先立ち、まず、この点について判断する。
(1) 前掲甲第一号証、第三号証の七、第一三号証の八、いずれも成立に争いのない甲第二号証、乙第一〇、第二四、第二五号証、いずれも原告代表者本人尋問の結果(第一回)により成立を認める甲第七号証、第八号証の一ないし三、原告代表者本人尋問の結果(第二回)により成立を認める甲第一八号証の一ないし三、いずれも被告代表者本人尋問の結果(第二回)により成立を認める乙第一三号証の一ないし五、第一四、第一五号証、証人木野洋の証言、原告代表者本人尋問(第一回、第二回)、被告代表者本人尋問(第一回)の各結果、前掲検甲第一四号証、B号袋であることに争いのない検甲第一五号証並びに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。
(イ) 原告は、昭和二六年に設立された株式会社で、水産魚肉練製品等の製造、販売を行つてきた。一方、被告は、昭和五三年三月に設立された株式会社で、冷凍食品の原料や蒲鉾の原料の製造、販売を主たる業務とするが、被告代表者がかつて勤務していた会社が原告に蒲鉾の原料を供給していた関係から被告代表者が原告を知つていたこともあり、被告設立直後の昭和五三年五月ころから、原、被告間の取引が始まつた。当初の取引内容は、蒲鉾の原料である冷凍すり身を被告が原告に納入するというものであつたが、当時、原告の経営状態が芳しくなかつたため、被告は、原告との取引にあたり、値引きに応じたり、決済期間を長くしたりしたこともあり、さらには、資金援助をしたこともあつた。
(ロ) その後、原告は、そのころ、かにの肉を模したいわゆるかに風味の蒲鉾が取引業者間では「かに棒」と呼ばれ市場に出回り始めていたのに着目して、繊維状のかに風味の蒲鉾を製造、販売することにし、新たに機械を購入してその製造を開始し、これを「北海ロール」と称して販売した。しかし、右販売当初の製品は真空パツクに包装しないで売られていたため保存がきかず、腐敗しやすいので、勢い、販路も制限されざるをえず、採算的に良好なものではなかつた。
そこで、原告は、長期間保存がきき遠隔地へも販売できる真空パツク入りにして販路を広げたいと考えたが、これを売りさばくだけの独自の販売組織を持つていなかつたため被告の販路を利用して販売したいと考え、被告にその旨申し出て協力を求めた。
(ハ) そして、原、被告双方の代表者が話し合つた結果、(a)原告が製造する真空パツク包装のかに棒製品は、原告が自ら販売するほか、被告も、これを買い受け被告の名前で販売すること、(b)右製品の真空パツクに用いる包装用袋の意匠は、北海道の地図と波の模様を配したものとすること、(c)被告が買い受け販売する製品の包装用袋も原告が販売する製品のそれと同じ意匠のものを用いること等を合意し、昭和五四年六月一九日には、食品衛生法との関係で同法施行規則五条三項に基づき、被告の名前で販売するものについては、それが原告の製造に係るものであることを示す記号として「大商A」なる記号を使用する旨を八尾市の保健所を通じて厚生大臣に届け出た。
(ニ) こうして、原告は、逐次、準備を進めた後、真空パツク入りのかに風味蒲鉾の製造、販売を開始したのであるが、本件意匠の登録出願前、遅くとも昭和五六年四月の時点では既に販売者及び製造者の表示として原告の社名を記載した三〇本入りと六〇本入りの包装用袋(被告がいう「原告用袋」)を使つて真空パツクしたかに風味蒲鉾を自らの手で販売する一方(以下、右の原告が自らの手で販売する商品を「原告直販品」という。)、販売者として被告の社名を記載し、製造者として「大商A」なる表示をした三〇本入りと六〇本入りの袋(被告のいう「被告用袋」)を使つて真空パツクしたかに風味蒲鉾を被告に販売し、これを被告の販路を通じて頒布していた(以下、右の被告の販路を通じて販売する商品を「被告経由品」という。)。なお、原告は、右真空パツク入りの商品の製造、販売を開始した後も、真空包装しないいわゆるバラ売り品の製造、販売も行つていたものであり、被告との取引においても、右被告経由品の取引と同時にバラ売り品の取引も行つていた。
(ホ) しかるところ、右原告用袋と被告用袋は、その間に、販売者及び製造者の表示について右のごとき差異があるほかは、形状、模様、配字、色彩等において何ら異なるところのないものであり、また、三〇本入りと六〇本入りの袋の間にも、三〇本入りのものがやや横長の長方形状であるのに対し、六〇本入りのものはほぼ正方形に近いやや縦長の長方形状である点において相違している以外は、模様、配字、色彩等において大きな相違のないものであつた。そして、右原告用袋のうち三〇本入りのものが本件でいうB号袋であり(なお、以下、右原告用袋のうち六〇本入りのものを便宜「C号袋」という。)、その形状、模様、配字、色彩等の概要は、原告が請求原因2(一)(3)IIにおいて説明するとおりである。
(ヘ) また、原告は、真空パツク入りのかに風味蒲鉾の販売を開始した後、暫くの間は、これを、販売者(原告又は被告)の社名等以外には格別な図柄のない無地のダンボール箱に入れて出荷していたが、その後、無地では趣がないということから、原告直販品、被告経由品のいずれについても、右包装用袋のそれと同様な北海道と「北海ロール」の文字を組み合わせた標章を表示したダンボール箱を使用するようにした。そのうち、原告直販品用に販売者の表示として原告の社名等を表示したものが、本件でいう「A号箱」であり、その形状、模様、配字、色彩等の概要は、原告が請求原因2(一)(3)Iにおいて説明するとおりである(なお、以下、右被告経由品用の箱を「被告用箱」という。)。ちなみに、原告直販品である北海ロールが、右のごとくB号袋に包装されたうえ、A号箱に梱包された状態で流通するのは、取引業者間の段階までであつて、一般需要者に販売される小売店の段階では、A号箱及びB号袋から取り出されて、七本ないし一〇本を単位として包装し直され、問屋等の取引業者を販売者として表示して販売されており、A号箱やB号袋が取引の過程で一般需要者の目に触れることは、ほとんどない。
(ト) 原告は、右のとおり、原、被告が原告用袋や被告用袋を用いて真空パツク入りのかに風味蒲鉾の販売を開始した後の昭和五六年六月五日になつてから、C号袋の形状、模様をもとに本件意匠の登録出願をし、さらに、その後の昭和五七年四月九日になつてから、B号袋の形状、模様をもとに類似意匠1の登録出願をした。
(チ) しかるところ、被告は、その後、原告との取引が円滑にいかなくなつたため、昭和五七年一〇月ころからロ号袋を使用した被告製品「かにロール」を販売するに至り、同年一一月に行われた極く僅かな取引を最後に原告と被告との間のかに風味蒲鉾の取引は途絶えた。
(リ) 原告は、その後、昭和五九年九月四日、被告の方で使用していたロ号袋の形状、模様をもとに類似意匠2の登録出願をした。
以上の事実が認められる。
(2) 原告は、原告と被告が原告用袋及び被告用袋を使用し始めたのは、本件意匠の登録出願後であると主張し、原告代表者本人尋問の結果(第二回)の中にこれにそう趣旨の供述部分がある。
しかしながら、右原告代表者本人の供述は、以下に述べる事実に照らすと、たやすく採用できない。すなわち、(イ)前掲甲第八号証の一、二(原告が梅崎産業より仕入れた北海ロール三〇本入り袋一覧)によれば、原告は、昭和五六年三月一九日には被告用の北海ロール三〇本入り袋を仕入れ、続いて同年四月三日には原告用の北海ロール三〇本入り袋を、さらに同月二一日には被告用の北海ロール三〇本入り袋を仕入れている等、原告用の袋と被告用の袋が明確に区別して取引されていることが明らかなところ、原告代表者は、その第一回本人尋問において、同号証は、B号袋及び被告用袋(三〇本入り)の仕入れ明細であるとの前提で供述しており、こうした点からすれば、右甲第八号証の一、二に記載されている原告用の袋とはB号袋のことであり、被告用の袋とは被告用袋(三〇本入り)のことであると認めるほかはないこと、(ロ)また、第一回原告代表者本人尋問の結果中には、右の箇所以外にも、本件意匠登録の出願前に原告が原告用袋及び被告用袋を使用していた旨供述している部分があり、その際、そのように市場に出回つてから出願したのでは意匠登録は無効であるといわれていることを知らなかつたのかとの裁判官の問いに対して、知らなかつた旨答えていること、(ハ)原告代表者が前示のごとく原告用袋や被告用袋を使用し始めたのは本件意匠の登録出願後であるといい始めたのは、第一回尋問後、暫く時間をおいて行われた第二回本人尋問においてのことであり、こうした経過からすると、原告代表者は、第一回本人尋問においては出願前の実施が自己に不利益になることを知らずに正直に供述したが、第二回本人尋問においては自己に有利になるように供述を翻したのではないかとの疑いを否定しきれないこと、以上のような事実に照らすと、第二回本人尋問における前示原告代表者の供述は採用し難いものであるといわざるをえない。
また、証人木野洋は、同証人の経営する株式会社木勝商店(以下「木勝商店」という。)は、昭和五六年一月ころからバラの北海ロールを原告から購入していたが、同年の梅雨ころに、気候が暖くなつても日持ちのする真空パツク入りの北海ロールを原告に注文しようとしたところ、原告に、もう少ししたらデザインを印刷した袋ができるから持つようにと言われたが、同証人は、どうせ袋から出してばらばらにしてから売るので、印刷はしなくてよいから早く送つてくれと原告に要望し、その結果、何も印刷してない無地の袋に真空パツクされた北海ロールを送つてもらつた旨証言しており、右証言だけをみれば、昭和五六年の梅雨ころすなわち本件意匠の登録出願時には、まだデザインを印刷した袋すなわち原告用袋等はできていなかつたようにみられないわけではない。
しかしながら、いずれも成立に争いのない甲第一五ないし第一七号証及び弁論の全趣旨によれば、北海ロールの真空パツクには、三〇本入り、六〇本入りのほか、五〇本入り、七本入りのものがあり、五〇本入りのものが昭和五六年の梅雨ころ及び夏ころに木勝商店に販売されていたこと及びこの時期に限らず五〇本入りのものが木勝商店以外の業者に販売されていた様子はないことが認められる。してみると、同証人の前記証言は、同証人が五〇本入りの真空パツクを要望したのに対し、原告は三〇本入り及び六〇本入りの原告用袋としてはB号袋及びC号袋を使用していたが、五〇本入りの真空パツク用としてはデザインした袋を用意していなかつたため、その印刷をしようとすると少し時間がかかる旨同証人に回答したのに対し、同証人が印刷は不要であると答えたので、原告は何も印刷しない無地の袋に五〇本の北海ロールを真空パツクして木勝商店に販売したものと解する余地がある。そして、このように解すれば、同証言をもつてしても、原告が昭和五六年の梅雨ころまで原告用袋及び被告用袋を使用していなかつたとはいえず、右証人の証言も、これらの袋が本件意匠権出願(昭和五六年六月五日)前に使用されていたとする前示認定の妨げになるものではないというべきである。その他、前示認定を左右するに足る証拠はない。
(3) そこで、以下、右認定、判断を前提として、本件意匠が登録出願前に公知のものであつたか否かについて検討するに、本件意匠がC号袋をもとにして登録出願されたものであることは、前示のとおりである。そして、前掲甲第一、第二号証、第三号証の七、検甲第一四、第一五号証及び弁論の全趣旨によれば、(イ)本件意匠は、そのもとになつたC号袋の透明な外枠部と図形部からなる長方形状の形状と表面及び裏面の上辺と下辺にそれぞれ一定の上下方向の幅を持つた波形図形を配し、表面図形部の中央に北海道の概略線図を配するという基本的な構成をそのまま取り入れて、模様を構成するものと認められない表面、裏面の各文字を除去し、円弧状波形図形と鱗状波形図形及び北海道の概略線図のうち右文字のあつた部分をその他の部分のそれと同様の模様と線で連続させ、裏面図形部の白地長方形の商品説明部分を除去して透明にし、全体の模様を明暗によつて描き分けたものであること、及び、(ロ)もともとC号袋の円弧状波形図形部及び鱗状波形図形部に書かれている文字は、いずれも比較的小さい文字であるため、右各波形図形を全体的にみれば、それらの文字が存在する部分にまで連続する波形図形を想定(又は看取)することは容易であり、また、北海道の概略線図も、それが北海道の独特の形状を表したものであるだけに、「かに風味」「珍味かまぼこ」なる文字と「北海ロール」なる文字があつても、北海道全体の概略線図を想定(又は看取)することは十分可能なものであつたことが認められる。そうだとすると、本件意匠は、その登録出願前公然と用いられていたC号袋の意匠(C号袋から模様を構成しているとは認められない文字を除去した残りの形状、模様によつて構成される意匠。以下、同様の意味で「C号袋の意匠」という。)から容易に創作されたものであり、これとは、上記各文字のあつた部分にその他の部分と連続する模様や線を補充し、裏面の中央部を透明にした点などにおいて異なるだけで、新規性、創作性の乏しいものであつたといわざるをえない。本件意匠は、それ自体が、その登録出願前公然知られたものでなかつたとしても、その登録出願前、日本国内において公然知られたC号袋の意匠に類似するものであつたというべきである。
(五) そして、元来、登録意匠の要部ないし特徴となるのは、公知意匠にはない新規で創作性のある部分であり、登録意匠の意匠権がその効力を及ぼしうる範囲すなわち登録意匠の類似範囲に入る意匠は、少なくとも登録意匠の持つ右特徴部分を含んでいなければならないと解されることからすれば、本件意匠権が効力を及ぼしうる意匠は、上記(四)(3)のごとき基本的な構成を共通にするだけではなく、形状、模様の具体的な構成においてもこれと共通又は類似したものでなければならないと解すべきである。蓋し、そうでなければ、本件意匠権は、先行の公知意匠であるC号袋の意匠ないしこれと同一というべき意匠にまでその効力を及ぼしうることになり、不当な結果を招くことは明らかであると考えられるからである。そして、そのことは、これに付帯する類似意匠1、2を参酌して、本件意匠の類似範囲を考える場合においても変わらない。すなわち、本件の場合、類似意匠1、2の登録出願前には先行意匠として前記公知意匠(C号袋の意匠)と本件意匠が存したことになるが、それにもかかわらず、類似意匠1、2が、それぞれ本件意匠の類似意匠として登録されているのは、それぞれが、本件意匠と基本的構成において共通するだけでなく、形状、模様の具体的構成においても共通又は類似していたからである、すなわち上辺、下辺の各波形図形が全体的に連続模様になつており、かつ、中央部にある北海道の概略線図も全体的に連続したものになつていたからである、そのために類似意匠1、2は、本件意匠には類似するが、C号袋の意匠には類似しないとして登録されたものであると解するほかはない。そうでなければ、類似意匠1、2は、それぞれ本件意匠のみならずC号袋の意匠にも類似しているにもかかわらず、本件意匠にのみ類似する意匠として登録されたことになるが、このようにみるのは、類似意匠の登録を「自己の登録意匠にのみ類似する意匠」に限つて認めている意匠法一〇条の規定に照らし相当でない。そうすると、類似意匠1、2が存することによつて確認される類似範囲も、結局、基本的な構成を共通にするだけではなく、形状、模様の具体的な構成においても共通又は類似したものすなわち上辺、下辺の各波形図形が全体的に連続模様になつており、かつ、中央部にある北海道の概略線図も全体的に連続しているものに限られてくるというべきである。
(六) そこで、以上に判示したところに照らし、本件意匠の構成とロ号袋の意匠の構成を対比してみるに、ロ号袋の意匠の構成は前示のとおり分説しうるものであり、それは、本件意匠と基本的構成を共通にするというべきであるが、形状、模様の具体的な構成においては類似していないことすなわち上辺、下辺の各波形図形が全体に連続模様になつておらず、かつ、中央部にある北海道の概略線図も全体的に連続したものになつていないことは、明らかである。
したがつて、ロ号袋の意匠は、本件意匠に類似するとはいえない。
3 そうすると、ロ号袋の意匠が本件意匠に類似することを前提とする本件意匠権に基づく原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がなく、棄却を免れない。
二 不正競争防止法に基づく請求について
1 請求原因2の(一)(原告の商品表示―容器包装―及びその周知性)について検討する。
(一) 原告は、原告製品(かに風味蒲鉾、北海ロール)の容器包装であるB号袋及びA号箱は、昭和五六年暮ころないし昭和五七年一月ころには、右蒲鉾の商品表示として取引業者及び一般需要者間に広く知られたものになつた旨主張する。
(二) しかるところ、原告がB号袋及びA号箱を右蒲鉾の容器包装として使用していることについては争いがない。
(三) そこで、B号袋及びA号箱が右蒲鉾の容器包装として使用され始めた時期についてみるに、原告は、その時期を昭和五六年の梅雨ないし初夏ころであつた旨主張し、原告代表者本人尋問の結果(第二回)の中には、右主張にそう趣旨の供述がある。しかし、原告代表者の第一回本人尋問の結果の中には、B号袋は、昭和五五年一〇月半ばころから、右蒲鉾の包装用袋として使用されていた旨の供述があるほか、被告代表者の第二回本人尋問の結果の中には、さらに早く昭和五四年五、六月ころからである旨の供述があつて、その供述は一致せず、本件にあらわれた各証拠を検討してみても、その時期を正確に確定することは、困難である。すなわち、前記意匠権に基づく請求に関して判示したとおり(前記一2(四)(1)参照)、B号袋が、どんなに遅くとも昭和五六年四月ころには、右蒲鉾の包装用袋として使用されていたことと、A号箱が、右蒲鉾の梱包用箱として使用され始めたのは、B号袋が使用され始めてから暫くしてからのことであることは肯認できるが、B号袋及びA号箱の使用開始時期をそれ以上に正確に確定することは、本件証拠上、困難であるといわざるをえない。そして、原告代表者が、その第一回本人尋問において、右蒲鉾の売れ行きが順調に伸び出したのは、昭和五六年一月ころからである旨供述していることと、右蒲鉾は、前示のとおり、製造開始当初は、真空パツクしないでいわゆるバラ売りされていたものであり、かつ、B号袋やA号箱の使用開始後も、右バラ売りがこれと並行して行われていたこと、しかも、右バラ売り分が、原告が取り扱うかに風味蒲鉾の取引の中で占める割合は、後記のとおり、決して極く一部というようなものではないと認められること等の事情を参酌すると、右B号袋やA号箱の使用開始時期をより正確に確定することが、右B号袋やA号箱の商品表示機能の取得やその周知性確立の認定、判断において決定的な意味を持つてくるとも解し難い。
そこで、進んで、原告が販売する右かに風味蒲鉾の取引形態等をみておくに、その中には、B号袋やA号箱を使用して原告自身が自らの手で直接販売する原告直販品と被告用袋や被告用箱を使用して原告から被告に販売し被告の販路を通じて流通させる被告経由品があつたことは前示のとおりである。しかるところ、前記一2(四)(1)に掲記の各証拠と前掲甲第一五ないし第一七号証、いずれも成立につき争いのない甲第一四号証、乙第一一号証の一ないし三、いずれも原告代表者本人尋問の結果(第一回)により取扱数量の点を除き真正な成立を認むべき甲第四号証の一、同号証の二ないし四の各一、同号証の七、八の各一、同号証の九ないし一一、同号証の一二ないし一六の各一、弁論の全趣旨により成立を認むべき乙第一号証、被告代表者本人尋問の結果(第二回)により成立を認むべき乙第一二号証の一ないし四、原告代表者本人尋問の結果(第一回)及び弁論の全趣旨によれば、(イ)原告直販品の主な販売地域は、大阪、兵庫、京都等の京阪神地区と広島であり、広島の関係では木勝商店が主な取引先であつたこと、しかし、同商店との取引は、ほとんど全部がいわゆるバラ売りのものとB号袋やA号箱を使用しない無地の袋に入れた真空パツクものであつたこと、しかも、同商店では、これを適宜の量にパツクし直し、同店の名前を表示して小売店等の得意先へ販売していたものであり、その段階では原告の名前は一切出てこなかつたこと(なお、同商店との原告直販品の取引は、昭和五九年ころには終つており、その後は行われていない。)、(ロ)一方、被告経由品の販売地域は、被告の支社がある四国の高松を中心に、営業所のある福岡を含め岡山、名古屋、北海道等の各地にも及んでいたこと、そして、被告経由品の中には、被告の支社のある四国のように原告から被告に宛て発送し、被告がこれを取引業者や小売店に配送するものと、被告の指定する取引業者に原告から直送されるもの(以下「直送品」という。)とがあつたが、被告へ発送された商品についてはその後の取引段階で原告の名前が直接表示されることは一切なく、また、直送品においても、送り状は被告名義のものが使用されており、その取引において原告の名前が出てくるのは、僅かに荷受主である取引業者まで届けられる運送伝票の中に出荷者として出てくるだけであること、(ハ)そして、原告の年商は昭和六〇年ころにおいても四億五〇〇〇万円から五億円程度であつて、それ以前にはこれを上まわるものではなかつたが、試みに、昭和五七年度全国蒲鉾メーカー上位五〇社の各売上高や各社の商品別生産比率を記載したランキング表(乙第一号証)をみてみると、原告はこの五〇社の中にも含まれていないし、右ランキング表に記載された各社の売上高とかに風味蒲鉾の生産比率を掛け合わせて右五〇社のかに風味蒲鉾の売上高を概算しても(もちろん、生産比率と売上比率は必ずしも一致しないし、かに風味蒲鉾以外の商品も「かに風味など珍味類」として分類している会社もあるので、あくまでも概算にすぎない。)、二八二億円余りに上り、原告の市場占有率は極く小さいものになること、しかも、原告製品のなかでもいわゆるバラ売りの占める比率は決して小さくないから(甲第一五ないし第一七号証)、B号袋に包装された原告製品の市場占有率はさらに小さなものになること、また、昭和五九年のものではあるが、かに風味蒲鉾の上位一二社の売上高合計は三五二億四〇〇〇万円に上るところ、原告はこの一二社の中に含まれていないこと、以上のような事実が認められる。なお、A号箱やB号袋が取引の過程で一般需要者の目に触れることがないことは、前示のとおりである。また、原告代表者本人の供述(第一回)によれば、被告経由品も、当初は原告直販品と同じくB号袋やA号箱に入れられて販売されていたが、その後、被告用袋や被告用箱で包装、梱包して販売されるようになつたというのであるが、仮に、原告代表者のいうように被告経由品がB号袋やA号箱に入れられて販売されていた時期があつたのが事実であるとしても、それが、せいぜい発売当初二、三か月程度の極く限られた期間内のものであつたことは、右代表者本人の供述自体から明らかである。
(四) そこで、以下、右の認定、判断を前提として、B号袋やA号箱の商品表示機能の取得及び周知性確立の点について考えるに、原告は、B号袋やA号箱は昭和五六年暮ころないし昭和五七年一月ころには原告製品の商品表示としての機能を取得し周知性を確立したというが、(イ)右時点は、原告代表者が原告のかに風味蒲鉾の売れ行きが順調に伸び出したという昭和五六年一月からみれば、まだ約一年を経過しただけの時期であること、(ロ)その間に、原告と直接取引を行つていた業者が、B号袋やA号箱をみれば直ちに原告の製品を想起するようになつていたとしても、それは、その取引形態からみて、多分にその者が原告と取引しているという事実に起因しているものと考えられ、それだけでは、B号袋やA号箱それ自体が商品表示機能を取得し周知性を確立したことの証左として十分であるとは考えられないこと、(ハ)他方、被告用袋や被告用箱に入れられた被告経由品を取り扱う業者は、原告が製造した商品を取り扱つていることには変わりがないとしても、取引上、B号袋やA号箱に接することは全くないのであり、B号袋やA号箱とは販売者や製造者の表示以外共通な被告用袋や被告用箱に接するとはいえ、それと原告との結び付き(そこに納められている商品が原告の製造に係るものであること)を認識する手掛かりといえば、直送品について送られてくる運送伝票だけであつて、被告経由品を取り扱う業者間にその取扱商品が原告の製造に係るものであるということそれ自体がどれだけ明確に認識されていたかどうか疑問であり、ましてやB号袋やA号箱と原告製品の結び付きが明確に認識されていたとは考え難いこと、(ニ)そして、原告直販品と被告経由品の前示販売地域の相違や、原告製品の前示市場占有率とその中に占めるB号袋やA号箱使用品の比率、(ホ)さらには、一般需要者が、B号袋やA号箱に、直接、接することはほとんどないと考えられること等の事情を考慮すれば、B号袋やA号箱それ自体が、原告主張のころに既に原告と直接取引関係に立つものの範囲を超えて、取引業者や一般需要者の間に広く知られ、原告製品の商品表示としての機能を取得し周知性を確立していたとは、到底認め難いといわざるをえない。そして、これを、その後、被告がロ号袋を使用して原告とは別にかに風味蒲鉾の販売を開始した昭和五七年一〇月ころの時点ないし本訴口頭弁論終結時の時点についてみても、肯認しえない(これを認めるに足る証拠はない)というほかはない。
もつとも、いずれも成立につき争いのない甲第五号証の一ないし三、第六号証の一、二及び証人竹原幸吉の証言によれば、原告が製造する北海ロールは、昭和五六年には全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会の品評会で会長賞を受賞し、次いで、昭和五八年には第三二回全国水産加工たべもの展において水産庁長官賞を受け、さらに、昭和五九年には第三三回全国水産加工たべもの展において農林水産大臣賞を受賞した事実が認められ、これらの受賞により、北海ロールや原告の業界内における著名度がある程度高まつたことは推認できるけれども、だからといつて、その容器包装であるA号箱及びB号袋までが直ちに著名になつたとまではいえない。さらに、原告は「かに風味 北海ロール」の商標が周知であることの証明書として前掲甲第四号証の一、同号証の二ないし四の各一、同号証の七、八の各一、同号証の九ないし一一、同号証の一二ないし一六の各一を提出するが、右の証明書は、いずれも原告が使用している商標「かに風味 北海ロール」が周知であることを証明するというだけのものでB号袋やA号箱それ自体の周知性を証明するものではない。また、その中には取扱数量を記載したものもあるが、原告代表者本人尋問の結果(第一回)及び弁論の全趣旨によれば、そこに記載されている右周知性の裏付け事実ともいうべき取扱数量が必ずしも事実に即したものでないことが明らかであるから、その信ぴよう性についての疑問を免れず、これらの証拠は、前記認定、判断の妨げになるものではないというのが相当である。そして、そのほかに、上記認定、判断を左右するに足る証拠はない。
2 そうすると、原告の不正競争防止法に基づく請求も、その余の点について判断するまでもなく、理由がないというほかはない。
三 結論
よつて、原告の請求をいずれも理由がないものとして棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 上野茂 小松一雄 青木亮)
イ号物件説明書
イ号物件に係る物品は包装用ダンボール箱である。
一 ダンボール箱のデザインの説明
別添写真イ―一ないし五に示すとおり、
1 直方体のダンボール箱の正面及び背面に各々「かにロール <R>」なる文字と北海道の概略線図とからなる標章と「かに風味」、「珍味かまぼこ」の文字を表し、
2 左右両側面に各々、品名と添加物の表示並びに販売者及びその営業場所を記載し、
3 上面に「送り先」、「御中」及び注意事項を記載している。
別添写真イ-一~五<省略>
ロ号物件説明書
ロ号物件に係る物品は透明な素材からなるやや横長の長方形状の包装用袋である。
一 包装用袋のデザインの説明
別添写真ロ―一ないし六に示すとおり、
1 表面の上辺部及び下辺部には、三条の円弧を同心円状に配して形成される扇形の図形を鱗状に配した波形図形が、外枠部分以外の全体に及ぶように表され、右上辺部と右下辺部の間の中間部には、北海道の概略線図が表され、
2 右中間部には、「かに風味」、「珍味かまぼこ」、「かにロール」及び「真空包装」の文字が記載され、右上辺部の模様の中央部に被告社名の略称である<DK>のマーク、右下辺部の左端部に「天然色素使用」の文字、中央部に被告の社名、右端部に「要冷蔵」、「業務用30本入」の文字が記載されるとともに、
3 裏面の上辺部及び下辺部には、三条の円弧を同心円状に配して形成される扇形の図形を鱗状に配した波形図形が、外枠部分以外の全体に及ぶように表され、
4 右上辺部と右下辺部の間の中間部には、「かに風味」、「珍味かまぼこ」及び「かにロール」の文字と製品説明が記載されている。
別添写真ロ-一~六<省略>
意匠公報(一)
意願 昭五六―二四七〇〇
出願 昭五六(一九八一)六月五日
登録 昭五八(一九八三)七月二〇日
創作者 北尾英夫
八尾市沼二丁目一一七番地 株式会社大源蒲鉾工業所八尾工場内
意匠権者 株式会社浪花大源
大阪市生野区勝山北一丁目一五番一一号
代理人 弁理士 清原義博
意匠に係る物品 包装用袋
説明 図面中、参考図は透明部を細斜線で示す展開図正面図のA―A線およびB―B線端面図を示すものである。
図<省略>
意匠公報(二)
意願 昭五七―一五四五九
出願 昭五七(一九八二)四月九日
登録 昭五九(一九八四)七月二四日
創作者 北尾英夫
八尾市沼二丁目一一七番地 株式会社浪花大源八尾工場内
意匠権者 株式会社浪花大源
大阪市生野区勝山北一丁目一五番一一号
代理人 弁理士 清原義博
意匠に係る物品 包装用袋
説明 左側面図は右側面図と同一にあらわれる。
図<省略>>
意匠公報(三)
意願 昭五九―三六九三二
出願 昭五九(一九八四)九月四日
登録 昭六一(一九八六)四月八日
創作者 北尾英夫
八尾市沼二丁目一一七番地 株式会社浪花大源八尾工場内
意匠権者 株式会社浪花大源
大阪市生野区勝山北一丁目一五番一一号
代理人 弁理士 清原義博
審査官 関口かおる
意匠に係る物品 包装用袋
説明 図面中、展開図において、細斜線を施した部分は透明である。左側面図は右側面図と同一にあらわれる。
図<省略>
ロ号意匠説明書
ロ号意匠に係る物品は包装用袋である。
一 意匠の構成
別添図面ロ―一図ないし八図に示すとおり、
1 縦横比がほぼ一〇対一三の相互に合着する二枚の長方形のシート状の表面及び裏面にそれぞれ透明部を有する図形部と透明な外枠部が配されている(第二図、第五ないし第七図参照。なお、第六図の斜線部分は透明部分を示す。)。
2 表面の図形は、図形部の下辺全体と上辺全体とにそれぞれ連続して扇形の波図形を鱗状に三段、二三個連ねた鱗状波形図形を配し、かつ、図形部のほぼ中央に大きく北海道の概略線図を配したものである(第二図参照)。
3 裏面の図形は、図形部の下辺全体と上辺全体とにそれぞれ連続して扇形の波図形を鱗状に三段、二三個連ねた鱗状波形図形を配したものである(第五図参照)。
4 表面及び裏面とも、図形部の上辺全体の鱗状波形図形における扇形の波図形の各円弧は下方に膨出し、図形部の下辺全体の鱗状波形図形における扇形の波図形の各円弧は上方に膨出している(第二図及び第五図参照)。
5 表面及び裏面とも、図形部の上下辺全体の鱗状波形図形における扇形の波図形は、三条の円弧を同心円状に配してなり、最上段又は最下段の波図形における最外周の円弧の最外端が、図形部の全縦長さに対して、図形部上下端から各約二三パーセントの位置となるように配されている(第二図及び第五図参照)。
6 北海道の概略線図はやや縦方向に偏平に変形され、縦辺がシート縦辺の約三五パーセント、横辺がシート縦辺の約五〇パーセントの長方形に接するような大きさに表されている(第二図参照)。
第一図~第八図<省略>
A号物件説明書
A号物件に係る物品は包装用ダンボール箱である。
一 ダンボール箱のデザインの説明
別添写真A―一ないし五に示すとおり、
1 直方体のダンボール箱の正面及び背面に各々「北海ロール <R>」なる文字と北海道の概略線図とからなる標章と「かに風味」、「珍味かまぼこ」の文字を表し、
2 左右両側面に各々、品名と添加物の表示並びに販売者及びその住所を記載し、
3 上面に「送り先」、「御中」及び注意事項を記載している。
別添写真A-一~五<省略>
B号物件説明書
B号物件に係る物品は透明な素材からなるやや横長の長方形状の包装用袋である。
一 包装用袋のデザインの説明
別添写真B―一ないし八に示すとおり、
1 表面の上辺部には、連続して円弧を連結した円弧状波形図形が、下辺部には、三条の円弧を同心円状に配して形成される扇形の図形を鱗状に配した波形図形が、それぞれ外枠部分以外の全体に及ぶように表され、右上辺部と右下辺部の間の中間部には、北海道の概略線図が表され、
2 右中間部には、「珍味かまぼこ」、「北海ロール <R>」及び「この商品は主原料、タラ(60%)」の文字が記載され、右上辺部の模様の中央部に原告社名の略称である「大源」の文字、右下辺部の左端部に「天然色素使用」の文字、中央部に原告の社名、右端部に「要冷蔵」、「業務用30本入」の文字が記載されるとともに、
3 裏面の上辺部には、連続して円弧を連結した円弧状波形図形が、下辺部には、三条の円弧を同心円状に配して形成される扇形の図形を鱗状に配した波形図形が、右下辺部の左端上方には、人形図が、それぞれ表され、
4 右上辺部と右下辺部の間の中間部には、「かに風味」、「珍味かまぼこ」及び「北海ロール <R>」の文字と製品説明が、右下辺部の右端部には、「業務用30本入」の文字が、それぞれ記載されている。
別添写真B-一~八<省略>